
二見書房 シャレード文庫
619円 (ISBN978-4-576-09140-2)



【あらすじ】
跡目争いの最中、芳野一葉は八年前に家業を嫌い出ていった霧嶋組組長の息子にして、かつての主・隆俊の警護を命じられる。母の罪を背負い、ヤクザとしてしか生きられない一葉にとって、自由奔放で力強い意志を持つ隆俊は幼い頃から唯一の希望。企業家となり成功を収めていた隆俊に疎まれようが、再び傍に立てることが一葉には幸福だった。そんな一葉に隆俊は、自身の恋人の護衛を当然のように要求する。隆俊が一人の人間に惚れ込む様に、一葉は過去一度だけ与えられた彼の愛撫を思い出し、未だ消えぬ恋情を持てあますが…
【感想】
芳野一葉は幼い頃に母親が亡くなり、ふとした縁で霧嶋組の家政婦をしている夫婦に引き取られ、霧嶋組組長の息子の隆俊と共に育ち何時しか一葉は隆俊に淡い想いを抱く様なる。
しかし、その関係はあくまで主従であり、友人では有り得なかった。そんな二人の関係も高校卒業を機に隆俊が家業を嫌って出ていき、一方で一葉は恩義から組に入った事により途絶えていたが…。隆俊の父親で霧嶋組組長が病気の為、組長を降りることになり、跡目争いが問題となり、火の粉がかからないようにと、一葉が隆俊のボディガードに派遣される事になるが――。
義月粧子さんは好きな作家さんの一人なんですが、基本的には海外を舞台にした作品が特に好きな作家さんで、今回はシャレードからヤクザ物ということで、どうしようかな~と本屋でパラ見をして、格好いいヤクザでしかも一途な受けという設定と、一葉のオムライスのくだりを読んで購入決定。
一葉の隆俊に対する一途な想いは、読んでいて切なくて、義月さんらしさが出ていたと思います。
ただ、隆俊が余りにも色々な事に無自覚な所に軽くムカついたのと、何より幼い一葉に母親の罪を押しつけてまくった霧嶋の組長の行動は酷すぎて読んでいて辛かったです。しかもその事についての謝罪とかないし。
最後は二人が無事に結ばれてよかったと思いつつ、その部分が後を引いてしまって、更にこれからの二人の関係も。どうも隆俊の自覚が甘く見えて、一葉がこれからも苦労しそうな感じを受けて…今イチ危うさを感じる終わり方でスッキリしきれない読後感になってしまいました。
評価【★★★★☆☆☆】