梅花の茶園
HP(梅花の園にてティータイム)の更新日記や、BL・JUNE作品・ライトノベルズ等の感想や日々の徒然を思いつくまま書いております。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:--| スポンサー広告| トラックバック(-) コメント(-)
2006年8月まとめ
 今月も色々と読みました。そしてまだ定期的に更新できてます!(←かなり予想外)
 月末に数日、田舎(熊本)へ帰省したので、その間は更新できませんでしたが…てか田舎はネットが無いんですよね…有る意味、ネット中毒気味なのでこれが辛かった…(苦笑)
 沢山持参した(4日程なのに20冊程持っていった…アホすぎです)本は結局2冊しか読破出来なかったですが…持っていくことに意味があります。一種の精神安定剤なのです、何しろ田舎は寂れた本屋にすら車で30分程かかる所なので…本が切れたら私がキレる…(いや、マジで)。
 でも結局、家事やら動物と戯れるのに忙しかったので、読書時間は全然とれませんでした(苦笑)
 
 あと、今月はお盆があったせいか、あんまり新刊本は買ってない気分…気分だけかもしれませんが、新刊よりも圧倒的に古本の購入が多かったのは、近所のBook-ofが夏休みのキャンペーンか8月は毎週水曜日レディースデーと称してBL本の割引サービス(なんと文庫は1冊250円が150円・100円が50円!!)をしてくれたので。いつもは読まない作家さんに色々チャレンジする良い機会だと思って沢山購入してしまいました。
 今の所、一番のアタリはあすま理彩さんです。今まで食わず嫌いをしていたようで全く読んでいなかったのですがこの方の時代物はかなり好きな雰囲気の作品でした。

BL小説
5★:かなりいい!
『合鍵』 結城一美
『愛してないと云ってくれ』 中原一也
『吐息の中に閉じこめて』 結城一美
『リンゴが落ちても恋は始まらない』 松前侑里
『純情アイランド』 砂原糖子
『君知るや運命の恋』 あすま理彩
『家賃』 月村奎
『檻の中で愛が降る~命がけの庭~』 あすま理彩

4★:楽しめて読めました。
『英国紳士のささやかな戯れ』 森本あき
『あなたと恋におちたい』 高岡ミズミ
『オガクズで愛が満ちる』 夜光花
『ボストン探偵物語』 遠野春日
『名前のない約束』 火崎勇
『この夜の果て』 毬谷まり
『そのわけを』 榊花月
『堕ちるまで』 響かつら
『ミクロレベルまで愛して』 中原一也
『吐息まで罪の色』 柊平ハルモ
『愛のお仕置き』 伊郷ルウ
『いけすかない』 榊花月
『監禁の甘い誘惑』 愁堂れな
『したたかに愛を奪え』 藤森ちひろ
『KISSのシナリオ』 池戸裕子
『緑陰-たったひとりのあなたへ』 春原いずみ
『欲望のベクトル』 きたざわ尋子

3★:可もなく不可もなく。
『若君様のキケンな情事』 あすま理彩
『プリティ・プリンス』 あすま理彩
『衝動のベクトル』 きたざわ尋子

2★:うーん、いまいち。
『ふれていたい』 榊花月
『不実なくちびる』 きたざわ尋子
『身勝手な狩人』 愁堂れな
『バルコニーから飛び降りろ』 水無月さらら

BL漫画
5★:かなりいい!
『おとなりにノラ猫』 新井サチ

4★:楽しめて読めました。
『裸足でワルツを』 三池ろむこ
スポンサーサイト
『衝動のベクトル』 きたざわ尋子
衝動のベクトルきたざわ尋子 / 高宮東
角川書店 ルビー文庫
514円 (ISBN4-04-446211-9)

【あらすじ】
 独占欲の強い恋人・達郎に、幼い頃から溺愛されてきた和希。しかしお互いの想いが通じ合ってからは、あまりの過保護ぶりに疑問を抱くようになっていた。邪魔者が多い家を出て二人だけの生活を望む達郎は、むりやり身体ごと懐柔しようとするが、和希はそのことに強く反発して露骨に彼を避けはじめる。そんな和希の態度に、達郎は……?

【感想】
 大手飲料メーカー・ササモトの社長・笹本武志の友人の息子で、幼くして両親を亡くし武志に引き取られ育てられ、現在ではササモトの副社長として辣腕を振るっている長谷部達郎。母の再婚によって武志と養子縁組みした和希。更に武志の隠し子として現れた河本亨と槇将吾。
 更に達郎が個人的に雇用していて家では執事の様な役割をこなしていつつ、横柄な態度の高城直征。長期の旅行から帰国した武志を含めて大所帯となった笹本家。和希は純粋に家族が増えたと喜ぶが、一方で達郎は和希を独占したいという衝動がだんだんと強くなってゆき――。

 「欲望のベクトル」の続編。
 今までは家の中でも和希と二人きりの時間を十分に楽しめていた達郎だが、家族が増えた事によりなかなか独占もできなくなり…しかも晴れて恋人同士となれたものの、家の中での行為に和希が恥じらって…二人だけの時間を満喫したいという気持ちからマンションへの引っ越しを提案するが、和希はそれを素直に受け入れられなくて…。
 達郎の思いと和希の気持ちのすれ違いが面白かったです。
 ただ話の進展がそんなになくて、展開も特に目新しいものでもなかったかなぁ…と少し物足りない感も残ってしまったのは残念でしたが、物語としてはすらっと読めました。

評価【★★★☆☆☆☆】
『欲望のベクトル』 きたざわ尋子
欲望のベクトルきたざわ尋子 / 高宮東
角川書店 ルビー文庫
495円 (ISBN4-04-446210-0)

【あらすじ】
 母親の再婚によってできた義理の兄・達郎に幼い頃から溺愛され、すっかり世間知らずに育ってしまった大学生の和希。そのうえ、その達郎に毎晩彼のベッドで眠る自分のカラダに悪戯をされているとは、少しも気付いていない。そんなある日、彼らの義父の隠し子だというふたりの青年・将吾と亨が突然現れ、和希たちが住む屋敷で同居することに!
 義兄弟という気安さから、将吾たちに懐く和希だったが、いずれ和希に手を出すつもりだった達郎は次第に苛立ちをつのらせて……!?

【感想】
 和希は10歳の時に母親の再婚によって義兄となった達郎と大学生になった18歳になっても共に同じベッドで眠る日々。初めて会った時から達郎の和希に対する優しさは、実の父に省みられず育った和希にとっては、かけがえのないもので…さらに一年前に母が病気で亡くなってからはさらにその度合いが強くなっていた。
 そんなある日、突然義父の隠し子という二人の青年が現れて、和希と達郎と共に暮らすことになった事から、それまでの二人の生活にも変化が起こり始めて――。

 和希の箱入り息子っぷりが凄かったかと…。
 達郎が和希を小学生の頃から育てあげていた様は、まるで光源氏と若紫のようで面白かったです。
 他人には冷淡で容赦がない達郎が和希に対してだけは優しいお兄さんな所もツボ。
 和希の母と結婚したいが為に、実子をつくりながら認知をせずに独身を通してきた義父の笹原も凄いキャラだと思いました、妻に先立たれ大企業の社長でありながら傷心の世界一周豪華クルーズとかに行っちゃって、隠し子問題も達郎に押し付けて逃げちゃったり(苦笑)
 また私的にお気に入りになったのは隠し子の一人・亨さん。思慮に深くて思いやりのあるこういうキャラは好きです。彼の話が読んでみたいなぁ。

評価【★★★★☆☆☆】
『プリティ・プリンス』 あすま理彩
プリティ・プリンスあすま理彩 / かんべあきら
プランタン出版 プラチナ文庫
552円 (ISBN4-8296-2270-9)


【あらすじ】
 ローゼンブルグ公国の王子だと突然告げられた大学生の。青い瞳の精悍な武官・ヴォルフに王族教育を受けることになったが、抵抗した雫を待っていたのはエッチなお仕置きだった!!
 「王子様には、身体で仕込んでやろう」ヴォルフに激しく唇を塞がれ、巧みに愛撫されて、雫は快感に悶えてしまう。臣下なのに傲慢なヴォルフの腕に抱き締められると、なぜかドキドキが止まらなくて――!?王子様育成ラブ・ストーリー♪

【感想】
 水野雫19歳は大学三年。家族はデザイナーの母親だけだが、母親は家庭より仕事と、昔から世界各地を飛び回っている。それについては応援している雫だが、仕事に熱中するあまり息子への仕送りや学費すらも忘れるのは困りもの。連絡を取ろうとしても電話も通じず…結果、生活費と学費を稼ぐためにバイトに精を出す日々。
 そんなある日、立て続けて二つのバイトをクビになり途方にくれていた雫の前に、ローゼンブルグと言う国の使者としてヴォルフが現れて…事情の解らないまま連れて行かれた先で、なんと雫がローゼンブルグの王子だと言われて――!?

 生活費などの為に幾つものバイトを掛け持ちすし、髪を切るお金や暇もない苦学生の雫がある日、王子だと言われて!
 雫の一人称で進むお話は一昔前の少女小説を彷彿とさせるものを感じました。
 面白くなかった訳ではないんですが、色々と話の中で気になる所、ツッコミたい所などがありお話の本筋に集中できない感じが残ってしまいました。
 シリーズ物として、他の作品に少しリンクしていたみたいなのでそちらも読んでみたいと思っていますが、基本的にあすま理彩さんの作品は個人的には、こういった現代物・一人称作品よりも時代物の方が好きかも…と思いました。

評価【★★★☆☆☆☆】
『緑陰-たったひとりのあなたへ』 春原いずみ
緑陰-たったひとりのあなたへ春原いずみ / あさとえいり
二見書房 シャレード文庫
552円 (ISBN4-576-01040-9)

【あらすじ】
 お願いだから……このまま突き放さないで。先生の…ぬくもりをください……っ。
 偶然発見した幻の名作「幻影」に強い印象を受けた美術館の学芸員・佐保雅和は顧問の榊原秀一郎の助けを得て、作品全点の収集に乗り出す。しかしそれは佐保が自ら封じた、とある記憶を呼び覚ます鍵だった。
 不安に陥る佐保を時に助け、時に導きながら見守り続ける榊原……。そんな榊原に一時のぬくもりを求めた佐保だったが、やがて二人の関係にも変化が――。運命的な出会いと別れが織りなす、薫り高いミステリアス・ロマン。

【感想】
 美術館の学芸員として働く佐保はある日、寄贈された収蔵品の整理中にある日本画を目にして、その作品に強く惹かれるものを感じる…その絵は、一部では幻と言われている夏島流一と言う謎の作家の「幻影」というシリーズ作品の一作だった。
 佐保はその絵に強く惹かれる心が、彼が高校生の時に事故で失った記憶に関係がある気がして、何とかその絵を全て見てみたいと思い始める。そして、その絵について詳しい知識のある榊原の助けを得て少しづつ絵の核心に近づいていくが、それと共に言いしれぬ不安感に襲われて――。

 読み進めるうちに、だんだんと明らかになってゆく“過去”と、それに関係する“幻影”と人々。
 とても落ち着いた文体で淡々と描かれていて、文学的で日本画と言う世界を舞台にした作品の雰囲気と凄くマッチしていたと思います。
 ただ、個人的な好みの所で私としては主人公をはじめとした登場人物のキャラがいまいちツボから外れてたらしく…感情移入しきれなかった部分が少しあったみたいで、文体や雰囲気は好きだったのですが、読後に余韻が思っていたよりなかったです。

評価【★★★★☆☆☆】
『KISSのシナリオ』 池戸裕子
KISSのシナリオ池戸裕子 / 宗真仁子
徳間書店 Chara文庫
533円 (ISBN4-19-900267-7)

【あらすじ】
 「このドラマは絶対成功させる!」話題の連ドラの主役に抜擢された若手人気俳優の藤城ユウ。高視聴率の記録を自ら破り続ける実力派シナリオライター・鷹野真幸の脚本を演じられるのだ!! けれど、鷹乃には「お前の演技は認められない」と言い渡されてしまう。憧れていた鷹乃の冷たさに反発を隠しきれない藤城。気持ちの距離を埋められないまま、クランクインは近づいて…!?

【感想】
『KISSのシナリオ』
 26歳の藤城ユウは、大学時代にモデルとしてスカウトされてから一年後には専属契約した雑誌の表紙を飾るまでに出世し、そのまま役者の道に進んでからもこれといった挫折もなく順風満帆に歩んできた。しかしだんだんと役者という職業に楽しさを覚えて行くにつれ、考えるようになってきたのは“今自分が演じるのはどんな人間か”という中身に対してのこだわりだった。それまで主に藤城に与えられてきたのはその外見からかちょっと軽めの軟派なキャラクター、別にそれに不満はないが、今までと違ったキャラクターにも尻込みせずに挑戦したい!そう思っていた矢先、舞い込んできたのが以前から注目していた脚本家・鷹乃真幸の書く連続ドラマ『AGAIN』の主役だった!!
 やる気満々で挑んだ撮影だったが、鷹乃は始終、仏頂面で…それもその筈、元々このドラマの主役は鷹乃が前々から是非にと望んでいた、子役出身の実力派と名高い俳優・宮木淳がする予定だったのだ…。そんな鷹乃からは厳しい言葉しか返ってこなくて…何とか認めさせようと躍起になる藤城だったが――。

 とにかく藤城のポジティブさには脱帽でした。打たれても打たれても、常に前向き…私にもこれだけのポジティブシンキングができればなぁ…と切実に思いますよ。
 そんな藤城の好きな言葉は“努力しても、必ず報われるとは限らない。だが、報われても報われなくても、努力した分だけは実はなる。実は身となって、その人の新しい血となり肉となる”この言葉に表される様に常に前向きに努力していく姿は読んでいて爽快でした。そして最初は反発を感じつつ、認めさせたい!と思ってた鷹乃にいつの間にか反発とは違う感情を持っていて…相手の事が気になるのは恋の第一段階ですよね。
 仕事に没頭すると寝食も忘れてしまい、過労で倒れる程のめり込んでしまう脚本家と、何でもそつなくこなすイメージで常に前向志向上等の元気俳優の恋は読んでいて微笑ましいものがありました。
『リハーサルはいらない』
 「KISSのシナリオ」のその後。
 お互いの気持ちに気付き、キスをするような関係になった二人だがその先の関係までには未だ進めていない…そんな状況を何とか進めたいと思う藤城だが、自らも鷹乃も売れっ子の忙しい身でなかなか時間も取れず、焦れったい思いをする日々。
 そんな折り、ドラマ「AGAIN」の続編として映画の制作が決まり、しかも端役で鷹乃も出演すると言う…これで鷹乃と一緒の時間が作れる!と喜ぶ藤城だが、そんな藤城に鷹乃は「撮影中はプライベートな感情は殺した方がいいと思う」という思いがけない事を言ってきて――。

 KISS以上に進むのにもまた一波乱。要領の良さそうな藤城にもカタブツと言ってよい鷹乃は難関でしたね…という事でなかなかにハードルが高かったようです(笑)。
 お互いがお互いを大事に思うからこそ、気持ちがすれ違ってしまい不安になってしまう事ってありますよね。
 またストーリー展開の他に、作品の中に何かしらのメッセージが作品ごとにしっかりと織り込んである所はさすが池戸さん…と唸らされました。

評価【★★★★☆☆☆】
『檻の中で愛が降る~命がけの庭~』 あすま理彩
檻の中で愛が降る~命がけの庭~あすま理彩 / 小山田あみ
プランタン出版 プラチナ文庫
571円 (ISBN4-8296-2335-7)

【あらすじ】
 「今度は…一夜では済ましませんよ」元下男の中原の言葉に、雪下侯爵家の嫡男・は震えた。3年前従順なはずの彼に、一度だけ陵辱を許したが、彼はその後組の若頭に出世し、今後は梓ごと家を買ったのだ。――貴族が金の為に弄ばれる。座敷牢に繋がれ、夜ごと秘処を暴かれ雄芯を穿たれ、貶められた。だが囲い者にされ、踏みにじられた自尊心とは裏腹に、貫かれると覚えさせられた甘い疼きが蘇って、梓は戸惑う。淫欲を無惨に刻み込まれているのに、何故…?命がけの至上の純愛!!

【感想】
 侯爵家の子息である雪下梓の学校への送迎は下男である中原耕介の役目だ。下男、その言葉を華族たちは卑しい育ちの者を軽蔑するかのように使う。しかし同じ華族でも梓にはその様な偏見はないが、しかし中原は苦手だった…。
 幼い頃より一つ年下のくせに勉強でも何でも梓よりも一歩先を悠々とこなし、そんな中原を梓の父も一目置き下男でありながら書生へと引き立て、今では父の仕事を手伝うまでになっており…。
 自分を敬うべき奉公人ですら、中原の方に一目置いている気配を見せ、年の近い梓と中原は好敵手として常に比較の目に晒される。本来ならば比較される立場にすらないはずなのに…しかも中原は優秀で、だからこそ梓の劣等感を煽るのだ。
 ある日、父の経営する雪下商会の会計が、会社の金を持ち逃げするという事件により雪下家の財政は一気に苦しくなり梓も大学を休学し、父と一緒に方々に頭を下げて廻ったが斜陽に見舞われた雪下家に世間は冷たくて…。
 そんな時、梓は学友の小林の訪問を受け「自分のものになれば融資をしてやる」と言われるが…卑劣な手段に訴えようとする小林に嫌悪を感じるが、それを中原に見咎められ、つい意地から何でもない事のように言ってしまう。そんな梓に中原は「金なら自分が何とかするか」と言い――。

 梓の中原に対する幼い頃からの屈折した思い。また思っている事を素直に上手く言葉にできず、周りから誤解されやすい梓の不器用さが痛々しかったです。
 そしてそんな梓に、幼い頃から一途に思いをよせる中原…その行動は一歩間違えればストーカーさん?と思ってしまう程一途でしたよ、えぇ(笑)…なのに肝心の梓には思いが一向に伝わらないのがむしろ哀れでした。
 今回は大正浪漫との事で、あすま理彩さんの作品って先日読んだ「君知るや運命の恋」でも思いましたが、こういう時代モノって、現代モノとはまたひと味違った艶の様なものがあっていいですね!
 しっとりとした文体が作品にとてもあっていたと思います。

評価【★★★★★☆☆】
『したたかに愛を奪え』 藤森ちひろ
したたかに愛を奪え藤森ちひろ / 稲荷屋房之介
プランタン出版 プラチナ文庫
552円 (ISBN4-8296-2337-3)

【あらすじ】
 十億の借金のカタに九曜会の若頭・多岐川に買われた。彼からの借金を苦に亡くなった両親の復讐を誓うが――「摘んで、擦ってみろ。そうだ、感じるんだろう?」支配者の傲慢さで命じる多岐川に、淫薬に侵された粘膜を玩具で嬲られ、淫らな体に躾られた。恥ずかしくて、怖くて、屈辱だった。けれど無慈悲に苛まれた夜、抱きしめられて慰撫するように撫でられると心地いい。酷い男のはずなのに、眩しいものを見るかのようなまなざしが、くちづけが、甘く優しく思えて…。愛を奪う、征服欲。

【感想】
 大学四年の白石凛がある日帰宅したら、彼を迎えたのは両親の変わり果てた姿だった。父の経営する投資会社の業績が思わしくなく借金苦から思い詰めた結果の、父による母を道連れにした心中であったが、突然の出来事で一人残された凛はただ呆然とするばかりで…。
 そんな時、現れたのが父の会社の顧客と名乗る多岐川隆将だった。彼は表ではいくつかの会社を経営する実業家だったが、正体はヤクザの若頭と言う、それまでの凛の生活とは縁のない人物だった。しかも父は多岐川から預かった8億の他にも彼から2億もの借金をしており…。考えたこともない金額に途方に暮れる凛に多岐川が出した借金の返済方法は「これからの人生をすべて、俺に売り渡せばいい」という想像もしない言葉で!?その場で破瓜の痛みを知らされた凛はそのまま多岐川に囲われる事になるが――。

 稲荷屋房之介さんのイラストに釣られて購入。
 えっちシーンがエロくて吃驚(苦笑)、でも思った以上に楽しめました。
 多岐川の狡猾で悪辣で強制的に快楽を与えるやり方に、意地も自尊心も剥ぎ取られていく凛…こんな境遇なのも、両親が死んだのも全て多岐川のせいだと思いこもうするが、だんだんと彼の意外な一面に心が絆されていくのを止められなくて…と言う凛の気持ちの揺れ動きが読みごたえがありました。
 ただ、視点が凛のせいか、多岐川が凛に惹かれていく描写があまりなく感じて、その辺りが少し物足りなく感じてしまったのは残念。

 あと、脇キャラで出てきた多岐川の親友の九重玲一と彼の恋人の高瀬広伸の二人、以前雑誌に掲載された作品があるそうですが、彼らの話も読んでみたいと思いました。

評価【★★★★☆☆☆】
『バルコニーから飛び降りろ』 水無月さらら
バルコニーから飛び降りろ水無月さらら / 高塚カズイ
徳間書店 Chara文庫
514円 (ISBN4-19-900292-8)

【あらすじ】
 市役所勤務で戸籍係担当の山中雅章は、超が付くほど真面目で無愛想。その山中の窓口に、市役所内の密かな有名人、町田渚が婚姻届を出しに来た。通算13回も結婚と離婚を繰り返す渚は、非常識なほどワイルドな美形。そんな渚に、山中はなぜか用もないのに構われて…。馴れ合いなんてまっぴらなのに、住所不定の渚をなりゆきで同居させることになってしまい!? ハーフビター・ラブ。

【感想】
 27歳の山中雅章はK市役所市民課勤務。七三分けの髪に黒縁メガネ、しかも笑顔の一つもなく毎日テキパキと、ただし愛想なく勤務をこなしている。そんな山中の窓口に訪れた、目が覚めるほど姿形の整ったハンサムと、小太りな女と言う不釣り合いなカップル。その幸せそうな様子に彼女いない歴三年の山中は心中穏やかではない。が、後でそのハンサム・町田渚が32歳にして既に結婚が13回目と言う記録の持ち主であることを聞いて、見下した気持ちでいたが…それから二ヶ月程が経ち、離婚届を窓口に持ってきた町田に普段なら持つことはない興味を覚え話しかけるが、話しているウチに町田が山中の顔が昔なじみと似てると言いだして――。

 最初は山中の性格がとにかく“嫌なヤツ”だったんですが彼の中にあるコンプレックスや自己に対する肯定的と否定的な思いのせめぎ合いの結果…と言う内容を読んでいるウチに山中に対しては親近感みたいなのが湧いてきてました。
 逆に町田に関しては最初はナンパなヤツなのかなぁ…と言う程度の認識でしたが、その生い立ちからか色々と複雑な人間に感じていきました、がその複雑さの説明がいまいち…ギャンプルで生計を立てているとか作中いろいろな町田の知人が出てきたりしてくる割にはその先がなかったなぁ…と言う感じで物足りませんでした。
 話としては楽しんで読めましたが読後感としては全体的に説明が足りない感じの物足りなさが残ってしまったのは残念でした。
 あと、町田が赤薔薇を抱えてくるシーンも私的には格好いいと言うよりちょっと引きました…山中の行動と共に…あんな所で、どうよー?と思ってしまった私は夢が無いのかも。

評価【★★☆☆☆☆☆】
『監禁の甘い誘惑』 愁堂れな
監禁の甘い誘惑愁堂れな / 高座朗
プランタン出版 プラチナ文庫
552円 (ISBN4-8296-2299-7)

【あらすじ】
 平凡を愛し、男受けする自分に気づけない香西は、突然ヤクザの御堂に監禁されてしまう。訳もわからず裸にされ、「ここを使うのは初めてか」いきなり彼の太い楔に貫かれた。抵抗もできず、痛みと快感に喘いでいたが、手錠、足枷、首輪まで嵌められて、ますます脱出は困難に。だが逃げだそうにも淫靡な指使いに男の誇りを奪われ、身体は陥落。その上御堂の意外に優しい瞳に誘われて、つい自ら腕を伸ばしてしまう。束縛の愉悦から逃れて、平穏な生活に戻れる日は、果たして……!?

【感想】
『監禁の甘い誘惑』
 32歳の香西高文は中堅の業務用コピー販売会社の営業。しかしバブルが弾けて以来、会社の経営も苦しいらしく人員削減の一つとして毎月のノルマが三ヶ月続けて達成できないとクビという暗黙裡のルールのあるシビアな状況にストレスはたまる一方。そんな時ふと家の近くに見つけたバー「恋~Ren~」に立ち寄り美貌のバーテン・廉に出会う。会社の愚痴を言うと、嫌な顔ひとつせずに聞いてくれる廉に癒される気持ちになり、いつの間にか週に二・三回のペースで通い詰めるようになっていた。
 香西は自分はノーマルだと思っていたが、何故か廉の大きな瞳に見つめられると胸はやたらと高鳴り…そんな自分の反応に首を傾げつつ一月余り通っていたが、二ヶ月続けてノルマが達成できずに崖っぷちにいたある日、大きな契約の目処が立ち、この喜びを真っ先に廉に報告したい!と行った「恋」で思わず廉を食事に誘い、了承を貰い有頂天になっていたが、次の日「恋」に行ってみたらソコにいたのはチンピラかヤクザ者のような集団で!?
 訳もわからず絡まれている香西を助けてくれたのは「恋」で毎回顔を合わせていた青年実業家風の男・御堂だったが、なんと御堂もヤクザでしかも若頭という幹部で、更には廉がヤクザの薬と金を持ち逃げしたらしく、その一味だろうと言われて――!?

 話の展開がどうなるのか解らずにワクワクしながら読めて楽しかったです。ただ、香西が綺麗な男受けする顔と言う設定だったハズなんですが、作中殆どそんな描写なシーンが見えず、最後に御堂がそう言ってるのを見て「御堂にだけ綺麗に見えたの?」とか思ってしまいました…というかそう言う設定(蓼食う虫も好きずき的に平凡でくたびれたサラリーマンな高文が御堂にだけは魅力的だったとか)の方が面白かったなぁ…とか思ってしまった私はマニアックでしょうか?(苦笑)
 あとプリズム文庫さんだから仕方ないのかもしれませんがえっちシーンがとにかく多くて…そんななくてもいいなぁ…と思ってしまいました。
『拘束のすすめ』
 『監禁の甘い誘惑』後日談。
 御堂がどれだけ香西にベタ惚れか、と言うお話。

 いやぁ、香西もエラい人に惚れられたもんですね(苦笑)
 束縛とか監禁とかしちゃう人は拘束もしちゃうでしょう。
 大笑いしながら読ませて貰いました。

評価【★★★★☆☆☆】
『身勝手な狩人』 愁堂れな
身勝手な狩人愁堂れな / 蓮川愛
徳間書店 Chara文庫
514円 (ISBN4-19-900300-2)

【あらすじ】
 一流商社に勤める高瀬智嗣の秘密――それは高校時代に、好奇心から親友とセックスしていたこと。ところが、六年間音信不通だったその親友・岩崎開が新入社員として配属されてきた!! その上、以前よりずっと大人びた開に「またセックスしよう」と誘われてしまう。なぜ開は僕を抱くんだろう――。
 開の糸がつかめないまま、繰り返し求められ、快楽に溺れてゆく智嗣だったが…!?

【感想】
 10年前、高校の席替え隣同士になったのが縁で親しくなった二人だが内向的で思ったことを上手く口にできないタイプの智嗣とは逆に、外向的で思ったことを全てそのまま口にしたカイは人気者になる素質は十分に持っていたが『来る者は拒み、去る者は追わない』という性格から友人は智嗣くらいしかいなかった
 そんなカイと好奇心から流されるままに関係を持った智嗣だが、高校三年の時にカイが女生徒から告白されて「いいよ」と答えてたのを聞きショックを受けそこで始めてカイを好きになっていた事に気づいて、カイから距離を置こうと決めてから六年。智嗣の前に新入社員として再び現れたカイから誘われて、未だに彼の事が吹っ切れていなかった智嗣はそのまま流されてしまい…何故自分を抱くのか、その理由をカイに確かめられないまま関係は続き。
 そんな折、アメリカから取引先の重役が来日してきて智嗣がその重役ケビン・フォースのアテンダントを勤めることになったが、そのケビンから思いがけず告白されて!?
 更にカイが上司の薦めで見合いをしたことを知り動揺する智嗣だが――。

 お互いの言葉が足りなくて、気持ちがすれ違っている様子が傍目にはわかりやすすぎるのに!とジリジリしてしまいましたが…視点が智嗣なので彼の性格上、積極的にはなれず、しかも過去にカイが「好きって言われると途端に面倒になる」と言っていた言葉に縛られてしまう様子は解らないでもなかったです。
 だがしかし、ちょいと話の展開がベタな感じで、ベタが嫌いなわけではないんですが盛り上がりに欠けた感じが残ったのが残念でした。
 あと、サラリーマンは好きなネタなんですが、新人二人のお話だったせいか、キャラ的にもちょっと物足りなかったです…私としては主人公二人よりも断然、横恋慕のケビン・フォースさんの方が気になったのですが…正直智嗣にはケビンは荷が勝ちすぎと思ったので結果として智嗣がカイを選んだのは良いんですが…別のお話でケビンのお話とか読みたかったなぁ(って論点がずれてますね、スイマセン;)。
 
評価【★★☆☆☆☆☆】
『若君様のキケンな情事』 あすま理彩
若君様のキケンな情事あすま理彩 / 樹要
プランタン出版 プラチナ文庫
533円 (ISBN4-8296-2205-9)

【あらすじ】
 落ちこぼれサラリーマンの宣彰は、実は由緒正しき徳王家の若君。親に内緒で会社員をしているところに、突然結婚の話が!? 家に帰ると三つ指ついて待っていたのは……しゃ、社長!? ちょっと待って、なんでオレが男を(しかもヤリ手のハンサム)嫁にもらわなきゃならないんだよ――!! 若君様、大ピンチ!

【感想】
 徳王宣彰は“お殿様”の家の出身だ。
 徳王家の歴史は戦国時代にさかのぼり、関ヶ原の合戦で徳川家についた徳王家は、譜代大名としては少し江戸から離れた場所ではあるが、二〇万国の領地を拝領し、現在A市と呼ばれる都市の大名となり、代々の殿様は名君の誉れ高い善政を敷き、明治になっても華族として残り更には、経済的にも事業投資に成功し資産もある。十八代目にあたる宣彰の父は市長、県知事を経て現在は衆議院議員としてA市に貢献している。
 勿論、代々の先祖の功績のおかげで地元では未だに徳王家に対する力は絶大で、父親は“大殿”宣彰は“若殿”と呼ばれているらしい…。
 勿論、宣彰も就職時には父からいずれ跡を継ぐために秘書になれと言われたが自分の力で道を開きたい!大好きな地元のためになる仕事をしたい!と親の反対を押し切って地元の都市開発を手がけるKAI開発会社に就職した。
 周りに自分が“若殿”であると言う事を隠す為、就職と同時に一人暮らしをした宣彰の正体はまだ周りにはバレていない。
 しかし、ある日家に帰ると会社の若き社長・河原木恵がアフタヌーンティのエプロンをしていて――。

 うーん、有り得ない話でツッコミ所満載でした(笑)
 コメディとしてはそこそこ楽しんで読めるんですが“若殿”として教育されてきたハズの宣彰が自分の家に関係する事にあまりに無頓着な様子はちょっと不自然さを感じました。
 また、社長である河原木の家が城代家老の直系だと言う設定はまぁ、面白いと思ったんですが女性でない恵が嫁として嫁いできたと言う不自然さの説明が最後の方までなかったので、常に不自然さを感じたり…また嫁攻だし…。
 宣彰視点の一人称での話の展開は文章も読みやすくてよかったんですが…ちょっと、えっちシーンが多すぎた気がします。なんか社長がセクハラ親父よろしく所構わず宣彰にちょっかいかけるんですが、かけすぎです…正直場所によっては萎えました。好きな人は好きなんでしょうが、私は全くないのは嫌だけど朝チュンでも全然OKな人なので、ここまでお盛んなのは…うーん。
 最後に一人っ子の宣彰のお相手が男で、お殿様の家系はどうなるんですか?と言うツッコミはしたらダメなんだろうなぁ…でもココまで歴史もあり慕われているっていう設定なのに、妹か弟でもいればなぁ。
 コメディとしては楽しめたけど、どうも引っ掛かる所がチラホラあって心の底からは楽しみきれなかったのが残念。

評価【★★★☆☆☆☆】
『不実なくちびる』 きたざわ尋子
不実なくちびるきたざわ尋子 / 桜城やや
角川書店 ルビー文庫
514円 (ISBN4-04-446207-0)

【あらすじ】
 小村夏巳は、適役専門俳優の父と、元女優の母を持つ以外には、ごく平凡な高校生。だが映画会社社長の御曹司で脚本家としても名高い黒坂季永に不注意でケガを負わせてしまったことから、その生活は一変してしまう。強引にポシリをやらせたうえ、こんな身体じゃ女とデートもできないと夏巳にセクハラ三昧の季永。そのうえ、夏巳に目をつけたゴシップ記者が持ち込んだ、夏巳が実は超大物俳優の隠し子だという証拠をあっさり買い取り、それを楯に押し倒してきて……!?

【感想】
『不実なくちびる』
 夏巳は高校三年生だが、受験は早々と推薦で決めてしまい、今は卒業を待つだけの気楽な毎日。ある日両親に頼み込んでやっと許可してもらった携帯に夢中で階段を踏み外して落ちかけた所を下に居た黒坂に受け止めて貰い難を逃れたが、その衝撃で黒坂の肋骨にヒビが入ってしまった…黒坂曰くお詫びとして些細な用事でこき使われる事になってしまい――。

 悪役専門の俳優の父と元女優の母が居て実は大物俳優の隠し子と言う設定に興味があって購入しましたが、私的にはその設定が取って付けた感じに思えてしまって残念でした。
 夏巳が育ての父に重度のファザコンであると言う部分はかなりツボでしが、肝心のお父さん本人がいつまで経っても出てこない…。まぁ主役は別に居るんだし仕方ないのかもしれませんが、主人公二人以外の登場人物が取って付けた感じでの登場ばかりになった感じがあり、更に言えば主人公二人の関係も流れが少し強引(お互いが惹かれていく過程などの描写が物足りなくて)に感じてしまったのも残念でした。
『そのあとは腕の中』
 『不実なくちびる』のその後。晴れて恋人同士になった二人相変わらず重度のファザコンの夏巳に嫉妬心を隠しきれない黒坂だが夏巳の家に挨拶に来ることになり――。

 やっと夏巳父が登場ですが、夏巳が黒坂脚本の父の出世作を見て「父さんが一番かっこいい」とかうっとりしてて、それに対して黒坂が突っ込んでる所なんかは読んでいて楽しかったです。

評価【★★☆☆☆☆☆】
『家賃』 月村奎
家賃月村奎 / 松本花
新書館 Dear+文庫
560円 (ISBN4-403-52124-X)

【あらすじ】
 中学教師のの部屋に突然、勤務先の学校を卒業した人気アイドルの望月和哉が転がり込んできた。担任でもなかった男の所へ何故かそのまま居着く和哉。態度だけはデカく「家賃ならカラダで払う」が口癖だが、芸能事務所をやめて親からも見放された少年を、遼は追い出したりもできなかった。けれどある時、今までの家賃だと言って、和哉が大金を持って帰ってきたことから……?
 やさしいプライベート・レッスン!!

【感想】
『家賃』
 24歳の里谷遼は中学校教師となって二年目、おおらかで親しみやすいと生徒からも少しナメられがちながらも慕われている。今日も男子生徒から用具を壊してしまったが何とかしてくれと甘えてこられた所だ。そんな遼の中学校での本日の話題は卒業生でアイドルグループ「ピース」のメンバー・望月和哉のスキャンダル。
 15歳なのにもかかわらず、夜の街でくわえ煙草の写真を週刊誌にスクープされてしまったというスキャンダルで一日持ちきりだ。遼は和哉の担任でもなく、あまり接点はなかったものの以前一度、彼の目に口づけした事があり…。
 彼は今後どうしていくんだろう、と思いながら帰宅しようとしたら和哉が突然現れて、しかも過去の出来事をタテにそのまま遼の家に居着いてしまい…その上、家の事は全くせず毎日ダラダラと過ごす和哉にアイドルをクビになり行くアテもない、遼は今後の事を訪ねるが和哉からは何の見通しもなく――。

 親が幼くして離婚して、他人よりも距離があり新たな過程もある父親と、和哉が中学生の時に恋人と事故死した母親。愛情に飢えた少年は、その飢えを満たすためにアイドルになってみたもののアイドルで得られるファンからの愛は刹那的で…虚しさを感じ遼の所へと転がり込んできた和哉。
 遼の視点から、15歳という年齢には不相応な厭世的な心を持った少年を見捨てられなくて、和哉の孤独感に心を痛め寄り添ってゆく遼の心が表現されていて、彼らの心の距離がだんだんと近づいてゆく様子が見事に描かれていたと思います。
 久々に月村さんの作品の醍醐味を味わえた気分です。
『家賃+α』
 「家賃」その後。
 晴れて付き合いだした二人。和哉も高校進学と言う当面の進路を決めて、週末には二人で遼のアパートで過ごす一時。ふとしたきっかけで二人の誕生日が同じ日なのを知り、興奮する和哉に遼の応対はそっけないもので――。

 何気ない日常が和哉視点で描かれていましたが、前作で拗ねて厭世感が溢れていた和哉の年相応の少年らしい一面が見れて楽しかったです。

評価【★★★★★☆☆】
『いけすかない』 榊花月
いけすかない榊花月 / 志水ゆき
新書館 Dear+文庫
560円 (ISBN4-403-52095-2)

【あらすじ】
 女にも男にも不自由したことがない傲慢で超俺様な遊び人・衛藤国春。二十一歳にして初めて“相手からふられる”という経験をさせられ苛々していた彼が、なりゆきから小生意気でキレイな“子猫ちゃん”を拾うハメに。自分の思い通りにならないそいつと暮らすうち、今まで誰にも抱いたことのない優しい気持ちが芽生えてきたりして……もしかしてホレちゃったのか?
 こんなの俺じゃないだろ!? 書き下ろし続篇も収録!

【感想】
『いけすかない』
 「ふれていたい」で出てきた夕雨の元カレの衛藤のお話。
 夕雨にふられて落ち込み気味の衛藤はカフェレストランで理不尽な理由でウェイターの青年・彗の足を引っかけて難癖をつける。まるきりの衛藤の八つ当たりの結果、住み込みの仕事をクビになった彗が衛藤が落とした免許証を持って彼の家に転がり込んできたのは予想外で…出ていけと言っても出ていこうとしない彗を押し倒そうとすると突然、暴れ出して「やめて、お兄ちゃん」とい叫びだして…さすがのロクデナシな衛藤もトラウマ持ちを無理矢理するのは面倒、とその場は引き…いつもならトラウマがあるにせよ、そのまま押し倒してやる事やって追い出してるハズなのに…それから二人の生活が始まるが――。

 「ふれていたい」でさんざんロクデナシっぷりを披露してくれた衛藤視点のお話で、夕雨を失って、今まで楽しいと思っていた遊びが楽しいと感じられなくなった彼が彗と一緒に暮らし始めて、だんだんと彗に惹かれている様子が丁寧に描かれていてよかったです。
『想うということ』
 「いけすかない」のその後。
 衛藤と両思いになり、付き合いだした彗だがSEXは兄とのトラウマのせいで、まだ勇気が出ない。そんな彗の事を大切に想いキスだけで我慢してくれる衛藤に申し訳ない気持ちと共に愛しさは募ってゆくが――。

 今回は彗視点でのお話でしたが正直、衛藤が良い人すぎて「アンタ誰や!」と思わなくもなかったですが…愛は偉大だって事ですかね…彗フィルターだったのか?(苦笑)
 今作では両親から愛された記憶がなくて、自分に自信のない彗の葛藤やそんな彗を衛藤が支える所など、なかなかに読み応えのある作品で楽しませて頂きました。

評価【★★★★☆☆☆】
『愛のお仕置き』 伊郷ルウ
愛のお仕置き伊郷ルウ / カワイチハル
海王社 ガッシュ文庫
562円 (ISBN4-87724-531-6)

【あらすじ】
 勤務先の会社が倒産し、ペットショップでアルバイトをしていた千裕の前に現れたのは、売れっ子の美形小説家・桐嶋玲音。大きな猫を10匹も飼っている玲音に見初められ、千裕は世話係として彼の屋敷に住み込むことになった。猫好きの飼い主と猫たちと、楽しく暮らしていたが、玲音の裏の顔は実は官能小説家!
 千裕は、立ち入り禁止の秘密の部屋に入ってしまったために、大量に置いてあるアダルトグッズでお仕置きされてしまって…!?

【感想】
 三年間勤めていた会社の倒産に落ち込み、すぐには次の仕事を探す気力を失っていた秋河千裕は、たまたま求人していたペットショップでアルバイトとして働きだしたばかり。もともと動物好きでだったので、今の仕事に不満はない。勤務するペットショップは立地が代官山と言う事もあり、客層は比較的裕福な客が多く、溺愛するペットに浪費する飼い主達が顧客である。ある日、店に訪れた男性が、エルメスの3~5万もする高価な首輪を10本も購入したのにはさすがの千裕も驚き、同時に10本もどうすのだろうと興味がわいたが、なんと彼・桐嶋は大型の猫種のラグドールを10匹も飼っていると言う。
 後日、商品を届けに桐嶋の家へ行った千裕はそこで人見知りが激しい筈の桐嶋の愛猫たちに殊の外気に入られ、その場で桐嶋に猫の世話係として雇いたいと持ちかけられて――。

 猫好きのため、カワイチハルさんの10匹のラグドールの愛らしさにノックアウトで購入決定(主人公は?笑)。10匹のモコモコ・フワフワな大型猫ハーレム…うもれたいです。読みながらちょっぴりトリップしてしまう事しばしば(苦笑)。
 しかし、桐嶋の猫バカっぷりもなかなか面白かったです。特に、2匹飼ってもどうしても微妙な“ひいき”が出てしまうのに10匹もわけへだてないって凄い事です。また「猫好きに悪いヤツはいない」とか普通に言えてしまえる辺り…いや、解るケド(笑)
 ただ、なぜ桐嶋がラグドールばかりを10匹も飼うことになったのか、その経緯をもう少し知りたかったなぁ…。思い入れとかあったのかしら。
 また、そんな桐嶋家のお猫様方は人見知りが激しくて、桐嶋以外の来客が来たら脱兎の如く逃げ隠れるのに、なぜか千裕には初対面からフレンドリーだったという設定はちょっと楽しかったです。
 で、肝心の桐嶋と千裕の仲は……うーん、千裕が流されすぎてたような、桐嶋が強引だったよーな…少し乱暴(行為ではなく話の流れが)気がしたのが残念です。
 でも、猫様達には楽しませて頂きました。

評価【★★★★☆☆☆】
『小説b-Boy 2006年09月号』
小説b-Boy 2006年09月号 今号から木原音瀬・ひちわゆか・和泉桂・岩本薫さんという実力派の作家さんの豪華ユニットが始動ですね。でも次が気になって仕方なくなりそうなので出来れば全部出てから読みたいナァ…と思ってるのですが、我慢ができなくて読んでしまいそうです(苦笑)。
 今号の私の当たりは西江彩夏さんの『嘘つきの恋』でした!




小説b-Boy 2006年9月号
NOVEL
『英国紳士』 あすま理彩(明神翼)
『嘘つきの恋』 西江彩夏(鈴木ツタ)
ダイヤモンドに口づけをシリーズショートソラの笑顔に乱されて』 あさぎり夕(佐々成美)
『学園ヘヴン 七条編 第二回(原作:Spray)』 市村奈央(氷栗優)
『リザーブキス、エンゲージラブ』 浅見茉莉(一馬友巳)
『最上の男。』 六堂葉月(南月ゆう)
『SASRA プロローグ』 Unit Vanilla(円陣闇丸)

COMICS
『わがままな人魚様 第三回』 果桃なばこ
『青い空があればそれでいい 最終回 LOVE STORM!』 桑原祐子
『集計!!男の社内恋愛』 沢口忍

↓以下は私の読んだ作品の個人的なあらすじと感想です(ネタバレ注意!)

『英国紳士』
 「他の男には抵抗しなさい。いいね?」僕が出会った公爵(デューク)は、冷たい瞳で熱い愛を囁く情熱のひとで――!…由緒ある貴族と紅茶のロマンス♪
 香乃菜生は紅茶の輸出入を専門に行っている会社にバイヤー兼営業として働いている。現在は入社二年目にもかかわらずロンドン本社への転勤してきたばかり、と言っても菜生が特別優秀な社員だったからと言う訳ではなく、先日両親が揃って交通事故で亡くなり、一人娘を亡くした祖父が気落ちし体調を崩した為だ。
 両親は父がイングリッシュ・ローズという紅茶の買い付けに訪れた英国で出会い恋をしたが、祖父に仲を反対され、母は駆け落ちした為、祖父は菜生に心を開いてくれようとしない。しかし、母が駆け落ちをする時に祖父の元に残していったイングリッシュ・ローズの入れ物を娘の思い出しながら寂しそうに眺めている祖父を見て、もしその紅茶を祖父に飲ませてあげられれば少しは祖父の気持ちも慰められるのでは…と思い探したのだが、その紅茶は最高級品であるが故に、代々の顧客である貴族の予約だけで出荷分がなくなってしまうような「幻の紅茶」であり、菜生の様な一般にはなかなか手に入れられないものだった…。
 しかしいつかは、と希望を捨てずに日々を一生懸命に暮らす菜生だが、ある日突然“紅茶泥棒”と間違えられた所に助け船をだしてくれたのは、瀟洒な燕尾服に身を包んだイギリス紳士然とした青年で彼の城に連れられてきた菜生はそこで紳士がエドワード・ローレンス公爵と知り、驚き更にそこで飲んだ紅茶のあまりの美味しさに驚愕する。そして、その紅茶こそが、探し求めていたイングリッシュ・ローズである事を知り…ひょんな事からエドワードに紅茶について教わることになり――。

 
 粗筋が長く成りすぎた…。
 タイトルからどんな話になるのかなぁ…と思いましたが、イギリスを舞台に紅茶に情熱を傾ける人たちのお話でした。菜生の紅茶に対する思い、前向きな姿勢など読み応えがあり、またお茶好きとしては、沢山のお茶が出てきて読んでいて楽しい作品でした。
『嘘つきの恋』
 一途でひたむきな恋人なんて鬱陶しい。でもいつか、ぬくもりに甘えはじめていた…。
 33歳の関和貴は二枚舌を持っている。心で思っている事とは正反対の事をさも本当の様に話せるのだ…。13歳でゲイだと解ってからは自由な恋愛を楽しんできた。しかし十年前に別れた西崎の事は今でも時折思い出し、事ある毎に粉をかけてしまう。そんな自身の行動も何時もの気まぐれの一つと軽く思っている。そんな関がふとした気まぐれから、全く自分の好みでもない大学生と関係を持つ。青年・大野友彦は身長こそ高いものの、ヒラメ顔にハの字眉で、着るモノもダサくていかにも田舎の青年と言った風情で、性格は何処までもお人好しで…。最初は飽きたらすぐに別れれば、と思っていたのに、何故か関係はズルズルと続いていき――。
オススメ!
 最初はとにかく関の性格が捻くれていて、どうしようもない感じでしたが…話が進むにつれ、なぜ彼がその様な性格になったのか?自分を必死で守ろうとしている裏返しなのだ…と言う事が説得力をもって理解出来、同時に彼の寂しい心が胸に迫ってきました。そして、そんな関に寄り添い、どこまでも関を許容し、溺愛する11歳も若い大野の愛に関が癒されていく様子は心に迫りました!!
 作者は私には初めての作家さんですが、今後注目しようと思います。
『リザーブキス、エンゲージラブ』
 ブルーグレイの射抜くような瞳に、あなたを忘れられない自分を、自覚した……。
 ホテルで燃え上がる、再会ロマンス

 露木千里は大学卒業後、スイスのホテルスクールで学び、グロリアホテル&リゾーツの幹部候補としてNY本社採用となり、そのままホテルグロリアNYで数年勤務し、その経験を買われホテルグロリア東京のアシスタントマネージャーとして赴任してから半年、日々訪れるお客様と接し、トラブルには的確に対処している千里だが…ある日、金褐色の髪にブルーグレイの瞳の外国人に目を奪われる。彼ジェイ・ラドフォードは千里のNY時代の上司で…千里が儚い恋心を抱いていた相手だったから――。
 折しもホテルには本社より内密の視察が入る事になっていて…。


 千里が仕事に打ち込む様子にホテルで働く人々の日常が垣間見えた感じで読んでいて面白かったです。ジェイからのアプローチを千里の臆病な心が素直に受け止められない所も、好きだからこそ、臆病になる…という気持ちもよく伝わってきました。ただ、話の筋はすぐにわかってしまいましたが。
『最上の男。』
 オカルトなんた大嫌い!な秀和が、実は“オカルト”だった!?
 おまけにエサは大嫌い!なアイツだなんて――!!

  16歳の佐倉秀和は徹底したオカルト否定派、しかしそんな彼が、自分がヴァンパイヤだ…と言われた夢を見た日から突然、同級生の男子達の“匂い”に強く惹きつけられるようになり、しかも中でも一番強く秀和を惹きつける“匂い”を出していたのは、よりにもよって秀和が一番関わりたくないと思っていた津元啓吾で…“匂い”はヴァンパイヤとしての秀和の食料としての香りだた――。

 なかなかツッコミ所満載のオカルトコメディでした。オカルトと言っても全然恐くなかったですが(笑)。
 個人的にはオカルト否定派の秀和くんには正直もうちょっと頑張って否定してほしかった気がしますが、まぁ背に腹はかえられないですからネ…お腹が空いたら仕方ないですよね(苦笑)
 たまにはこういう話も面白かったです。
『吐息まで罪の色』 柊平ハルモ
吐息まで罪の色柊平ハルモ / 笹生コーイチ
プランタン出版 プラチナ文庫
552円 (ISBN4-8296-2308-X)

【あらすじ】
 男娼のは、突然、経済ヤクザの章博の愛人になるよう命じられる。海が、彼が探し続けている行方不明の恋人・陽海にそっくりなのだという。「少しずつ、濡らしてあげよう」
 つらい行為しか知らなかった海に与えられる、甘い愛撫。一途に恋人を求める章博の熱に揺さぶられながら海は思う、身代わりでもいい、この温もりに包まれるのなら。いっそ、自分が陽海だったらよかったのに、と……。
 すべてを失っても、この想いだけは残ればいい――狂おしいまでに求める、ただひとつの愛。

【感想】
 十六歳の松崎陽海は、厳しい躾で自分を縛り付ける両親に年上の男性が恋人だと言う理由で交際を反対され、家出をして恋人の章博の家で二人で生活をし始めて一週間。幸せな毎日だったが、そこに突然警察が来て両親が章博が陽海を誘拐したとして告訴したと章博を連行してしまう。
 そして一度は親元に帰った陽海が章博の潔白を訴える手紙を書きかけのまま、忽然と姿を消したのはそれから三日後の事で、以来二年の間、陽海を捜し求める章博の前に現れたのは、陽海と全く同じ姿形、ホクロの位置まで同じなのに、陽海とは全く性格の違う花園海と言う少年で…。
 ひたすらに陽海を求める章博と、記憶が無いながらも章博に惹かれはじめる海だが――。

 陽海と海の性格の違い、何故陽海が記憶を失う事になったのか、彼の脆い性格のバランスの中でいかに章博と言う存在が大きなものであるのかと言うのが読んでいくウチに強く伝わってきました。そして海と言う存在…自分の中に二年間の記憶しかないと言う不自然さを不自然と感じない歪みを抱えたまま生きてきた彼が章博と出会い、だんだんと彼を愛していく過程。そして、愛する章博が求める“陽海”に一生懸命似せようとする姿は切なくなるほど健気でした。
 章博も愛する恋人を失い、彼を捜すためにそれまで証券会社のサラリーマンと言う表の社会で普通に生きてきた生活を捨て、ヤクザの世界にまで飛び込む一途さは見事。
 最初に思っていたよりも遙かにヘビーな内容でしたが“何故そうなったのか”と言う理由付がきちんと説明されていたのでグイグイと作品に引き込まれていきました。
 ただ、楽しんで読めて、ハッピーエンドで良かったね!と思えたのですが、彼らのその後にはまだまだ茨の道が残っていそうだなぁと心配にもなってしまいました。まぁ、彼らは二人で乗り越えられると思うのですが。
 …そしてキャラとしては主人公達よりも私としては脇役で出てきた華やかなモデルの様な美貌の持ち主でいながら底が見えない恐ろしさを持つヤクザの小城と、莫大な借金によってそんなヤクザに飼い殺されいる、何処か生活に膿んだ雰囲気の精神科医が気になって仕方なかったです。この二人の話が読みたかった!

評価【★★★★☆☆☆】
『君知るや運命の恋』 あすま理彩
君知るや運命の恋あすま理彩 / 如月弘鷹
白泉社 花丸文庫
533円 (ISBN4-592-87447-1)

【あらすじ】
 昭和初期、貴族と平民が厳然と別れていた時代。奈津は名門・樋之口侯爵家に生まれながら、家では母の身分ゆえに異母兄に虐げられ、外では貴族階級の一員と白眼視を受ける幸薄い日々を送っていた。そんな奈津の心の拠り所は、級友・日高への淡い恋。だが、日高は樋之口家と対立する新興実業家の跡取りだった…。せつなく胸を焦がす純情恋愛ロマン!

【感想】
オススメ!
 外では地位をかざし裕福な生活をする華族の一員として白い目で見られるが、その実は家では使用人と同じ仕事と食事で、更には女中達からも陰口を言われ蔑ろにされる生活の奈津。
 全ては異母兄である憲和の指示によるのだが、来客がある時には下働き等はさせない為に外からは慈悲深い兄であると思われている、が実体は全く逆であった。だが、誰も真実は知らず…。
 そんな二面性を持つ憲和は、仕事の面でも卑劣な方法を厭わず、商売で対立していた日高家の長男を攫い座敷牢に閉じこめ、犯人がわからない様に薬品を使い盲目にし、対立する仕事から手を引くよう圧力をかけて!
 級友である日高が異母兄によって監禁されている事を知った奈津は世話をしたいと憲和に申し出、献身的に世話をするうちに日高の態度も打ち解けたものになってゆくが、このまま牢にいたら日高が憲和にどんな仕打ちを受けるか解らないと、日高が歩ける様になったのを確認した奈津は日高を逃す。目の見えない日高は自分の世話をしているのが奈津とは知らず一緒に逃げようと言うが、嬉しく思いつつも自分の正体を知れば…そう思い日高の前から姿を消す。
 事件後、程なく日高は英国に留学していき…。更にそれから五年後、再び再会した二人だが、日高は五年前に自分を看病してくれた青年を捜し続けていて――。

 あすま理彩さんの作品は初めてでは無いんですが、少し印象が変わりました。良い方向で。
 正直、この時代の作品ってどうしても戦争に突き進む直前と言う事で未来を想像してしまって、ハッピーエンドでも何処か悲しくなってしまうんですが、今作に関して言えばそんな事も忘れてしまう位、作品に引き込まれてしまいました。
 奈津の辛い生い立ち故の諦め慣れた性格。
 日高の華族に対する嫌悪感。
 彼らの間に芽生える想いと、真実のすれ違いが切なくて、その切なさが読み応えになっていたと思います。
 とにかく虐げられる奈津が健気でまるでシンデレラの様な生活なのに、どんなに辛くても外ではそんな素振りを感じさせない凛とした気丈さが、ホロリと来ました。憲和がとにかく嫌な男だったので、素直に憎めたのもよかったのかもですが、最後に幸せになれた奈津が見れて嬉しくなりました。このお話、もう少し幸薄かった奈津の幸せな場面が見たい…続編読みたいなぁ。
 作品の雰囲気とキャラと如月弘鷹さんのイラストもすごくマッチしていたと思います。

評価【★★★★★☆☆】
『裸足でワルツを』 三池ろむこ
裸足でワルツを三池ろむこ(Miike_Romuco)
芳文社 花音コミックス
562円 (ISBN4-8322-8409-6)

【あらすじ】
 小説家の阿部は、出版社アルバイトの克実を犯した。2年後、突然阿部のもとに押しかけてきた克実は「好きだ」と積極的にカラダを開いたのだ。なぜ彼を追い返さないのか…この気持ちは何だろう…。
 恋愛に少し臆病になっている小説家を青年の想いが揺さぶる――続編書き下ろし入り。
 他に独占愛、プロポーズなど恋の場面を描き出す珠玉の短編も収録した初花音コミックス。

【感想】
『裸足でワルツを』
 表題作です。十歳以上も年下の二十歳そこそこの青年・克実を押し倒した中年の作家の阿部。
 それから二年、突然現れた克実にだんだんと癒されていき――。

 少しくたびれた雰囲気の阿部が視覚的に好みでした(親父スキーなもので…)。またノラ猫のようにフッと現れて阿部の家でくつろぐ克実、彼らの間にある間が日向の様に暖かく感じられて、読後感がよい作品でした。
『ここへおいで』
 上作の続編。克実と同居し始めて一ヶ月、掃除・洗濯・食事とかいがいしく世話を焼く克実に最初は煩わしさを感じるかと思っていた阿部自身もそれを自然に受け入れており…それに伴い、今後への『不安』が少しずつ増してきて。そんな折り、克実の“元恋人”と名乗る男が現れて――。

 ズルくて臆病な男(阿部)に、身も心も捧げてる克実が健気でした。何だか全体的に駆け足っぽくて物足りないと言うか、もう少し深く描いて欲しいなぁ…と思ってしまったのですが、雰囲気はとても好みでした。
『GOOD SKY SUNNY DAY』
 陸上部員の美典は、不慣れなアナログカメラに悪戦苦闘しながら、部内のアルバムの為の写真を撮影中。残すは棒高跳びの吉崎。あまり話したことはない相手だけど部内唯一のインターハイ選手だ…彼に写真を撮るから適当に飛んで欲しいと頼むと「てきとーになんて飛べない」と言われ、ムッとする美典。だが、適当に走っている現在の自分と違い、黙々と飛び続ける吉崎はキレイで――。

 高校生の男の子達の清々しさが満開の作品だったと思います。読後感は暖かい感じになります。
『Cowardly hand』
 「俺たち付き合おうか」圭に言ったら「冗談だろ?」と言われた雅志、その時は圭との関係を失いたくなくて“冗談”にしてしまったが、それから三年。圭が彼女と別れたと知り、それを嬉しく感じる雅志は――。

 臆病な人たちの、一歩踏み込む勇気の描写が初々しくて可愛かったです。
『さよなら、冬の日』
 凍てつくような冬の日、海辺に来た敬介と琳。彼らは恋人同士、だけど琳は敬介が女性に告白され、それを断っているのを見て、自分たちの関係ではこれ以上敬介にとりプラスにならないと別れを決意するが――。

 プロポーズ特集とのことで、見事にプロポーズの場面が劇的に演出されていたと思います。いや、敬介が格好良かったです。
『この手をとって』
 幼児期に女児達の取り合いに巻き込まれたトラウマで軽く恋愛恐怖症気味の三年の森永はある日、高校の資料室に資料を取りに行って、女性と抱き合っている一年の横井に驚く。慌ててその場を後にするが、後で再度資料を取りに戻るとそこには横井だけが居て――。

 高校生のとても甘くて、初な恋のお話でございました。たまにはこういうお話も爽やかでいいなぁと思いました。
『どうしたらいい、この恋を』
 宇野は小さな広告代理店に入社して半年。入社して何かと親切に指導してくれた隣の席の黒河が好き。何とか認めて貰いたくて仕事も頑張るが、最近前よりも黒河の態度がそっけなく感じて――。

 えー、黒河が可愛いです。不器用な感じが自然に可愛く感じました。後輩×先輩モノとしては王道な感じでした。
『夏風邪』
 表題作のその後。
 夏風邪をひいた克実とそれを看病する阿部。その後の二人のある日の一コマ。

 二人の関係がとても自然で、また風景が木造家屋なせいかとても懐かしい雰囲気がありました。
 全体的にとても雰囲気は良かったけれども、どのお話も短くて少し物足りない感が残りました。
 三池ろむこさんの作品は初めて読みましたが、長編でもっとじっくりとお話を読んでみたいナァと思いました。

評価【★★★★☆☆☆】
『ミクロレベルまで愛して』 中原一也
ミクロレベルまで愛して<br />中原一也 / 夏目イサク
プランタン出版 LAPIS文庫
552円 (ISBN4-8296-5353-1)

【あらすじ】
 水野は中学校からの芹尾との腐れ縁を切ろうと就職を機に逃げるが、事故に遭って芹尾が研修中の病院に運び込まれてしまう。水野に執着する芹尾に辟易する水野だが、実はほんの僅かな時間、芹尾に惚れたことがある。そのせいか芹尾に無体なことを要求されても逃げられない。怪我のせいもあって抵抗できずに抱かれてしまうが――。

【感想】
 中学一年生の時に初めて出会った時は水野の方が身長もあり、芹尾は少女の様な見かけでカツアゲされていた所を助けたりもしたのに、それからまるで雛の刷り込みの様に水野の後を付いて廻っていた芹尾はいつの間にか水野よりも成長して、更には“変な趣味”まで持つようになって!?
 このままの関係ではダメだと思い、距離を置いたのに、事故で腐れ縁が復活してしまい…流れで(?)芹尾に抱かれ、更には二度三度のトラブルで芹尾への気持ちにだんだんと気付くが、対して芹尾は何処までも他人事の様で――。

 まず、芹尾の変な趣味が、本当に変でした…!(どんな趣味かはタイトルがヒントですが)最後になればなるほど「コイツ変態や!」と思わされる攻も珍しいかと(苦笑)…王子様ぶりにハンサムで、医学生でと好条件でも一皮むけば情緒に鈍感で変態な攻って良いところと悪いところを±したらマイナス要素の方が勝ってますが…それでも水野はいいんだね、惚れた欲目だねぇ…としんみりしてしまいます(笑)
 まぁ、水野はそれでも芹尾がいいらしいんで、最終的にはヨカッタね、と思えるんですが。と言うか、私主人公二人よりも気になる人達が居たんですよ!芹尾の異母兄と、水野の学生時代のバイト先の飲み屋のママ・ルナさん(♂)!
 芹尾兄は最初、嫌キャラかな?と思ったら反対で何やかやと主人公二人の仲を取り持とうとして(逆に複雑にして)くれたりしてました。
 そして、ルナさん!見かけ二十代で親の遺した飲み屋の為に趣味でもない女装をしてる三十七歳の美人な男前さん!水野や芹尾が来ると無条件でご飯を作ってくれたり、めちゃくちゃ優しい!でもちょっと小悪魔な所も。で、いつの間にか芹尾兄まで通い詰めてる所なんか、大注目してしまいました。この二人、くっつけ~~~~と念を送りながら読んでいたんですが、残念ながらくっつきませんでした…。是非ともこの二人の話も読みたいです!

評価【★★★★☆☆☆】
『純情アイランド』 砂原糖子
純情アイランド砂原糖子 / 夏目イサク
新書館 Dear+文庫
620円 (ISBN4-403-52139-8)

【あらすじ】
 崎浜港平(20)には悩みがあった。島の生き神様同然の幼馴染み比名瀬に好かれて以来、生まれ育った比名島を出られない。比名瀬から逃げ回ること11年、その風景は日常と化していた。そんなある日、比名瀬がアパートの隣室に越してくる。生活能力ゼロの比名瀬をなぜか放っておけない崎浜。だが仕方なく世話を焼くうち、一途に自分を慕う比名瀬を可愛く思い始め……!? 大量書き下ろし続編も収録、島ものBL決定版!!

【感想】
『純情アイランド』
 比名島、日本海に浮かぶ大きくはないが小さくもない島でで本州から渡船で30分程の距離にある。全国的に知られた島ではないが一つだけ余所にはない物がある。それは“大学”。
 そこに通う崎浜港平と比名瀬稜は共に比名島の出身。ただし、崎浜が六人兄弟で家族八人で六畳二間プラス四畳半の家で生活する貧しい家の出身に対して、比名瀬家は絵に書いた様な資産家。島の名はかつては島全てが比名瀬家の持ち物だった証、更にその昔神話の時代にはご先祖が災厄から島を救ったと言う伝承まであり、島民の比名瀬家に対する意識はまるで神か仏の様で…そんな比名瀬家の一人息子である比名瀬に小三の時に気に入られて以来十一年、崎浜は島から一歩も出られない…何故か崎浜が島から出ようとすれば空はにわかに曇り、雷鳴と豪雨が降り、船は転覆寸前に…!?そんな有り得ない非常識が本当にあるのだ――。

 雑誌掲載時にも楽しく読ませて貰ったのですが、久々に読み返して、笑いが止まりませんでした。主にニヤニヤした笑いなんですが(不気味;)
 いや、もう比名瀬のお坊ちゃまぶりがいいです!学業は軒並み“優”なのに日常生活に関する事は何一つダメ、だけど本人に自覚ナシ。とか、崎浜にベタ惚れで道を歩く時も前を見ずに崎浜の顔だけを見て歩くからすぐに転びかける所等々、数えだしたらキリがないチャーム(?)ポイントの数々で笑いが絶えません。
 何より比名瀬の天然ぶりが徹底していて、いっそ清々しいのです。
 一方、崎浜は根っからの庶民&常識人を自負しているだけあって、色々と無駄な抵抗をしてます。ハタから見てれば「何だかんだ言っても…」と一目で解るのに、必死で認めようとしない様はいっそ見事。と言うか、バカ(笑)
 この二人の様に最初から最後まで、笑いが止まらない一作です。有り得ないけどあったら面白いと思わせるコメディでございました。

『純情クリスマス』
 前作で、やっと自身の気持ちを受け入れた崎浜、しかしいざ“好きだ”と思うようになると意識しすぎて逆につれない態度や、やせ我慢をしてしまい…そんな崎浜に一喜一憂する比名瀬。そして両思いになれても相変わらず島から出られない崎浜。これでは比名瀬と街にデートにも行けない!と思っていた所に聞き込んだのが、今まで神頼みに通っていた島の神社は50年程前に移されたもので本当の神社は山の中にあるという新事実!
 早速、神頼みに向かった崎浜にお約束の様に付いてきた比名瀬だが、そこで思わぬアクシデントにより、何と記憶喪失になってしまって!? しかも主に忘れたのは「崎浜に関する事」のみで…そんな状態の比名瀬に苛立つ崎浜だが――。

 比名瀬稜の頭の中の80%はは崎浜で出来ています、よって崎浜の事を忘れたら頭の80%は穴ぼこ状態になります…。
 しかも比名瀬稜は子供はコウノトリが運んでくると思っています。「違う」と訂正すれば「キャベツからも生まれる」と反論します。…そんな20歳(爆笑)
 比名瀬のカッ飛び具合がグレードアップしていて、笑えました。
 作中、崎浜が「比名瀬はアホだ、おとぎの国育ちの男だ」と言ってるのにニヤリとしてしましました。
 比名瀬の崎浜に対する一途さが徹底していて読んでいて気持ちよいです。
 崎浜が相も変わらず照れ屋で「好き」の一言すら満足に言えない様子も読みながらジリジリしますが、それも微笑ましいです。
 もう、最初から最後まで笑いで満たされる一作でした。たまにはこういう作品も良いですね。

評価【★★★★★☆☆】
『リンゴが落ちても恋は始まらない』 松前侑里
リンゴが落ちても恋は始まらない松前侑里 / 麻々原絵里衣
新書館 Dear+文庫
560円 (ISBN4-403-52130-4)

【あらすじ】
 が恋人との旅行から帰ってくると、部屋にはなぜか他人が住んでいた。見覚えがある男は、同僚の野宮暁人。忍が男と不倫していることを知った父が、忍からマンションを取り上げ、彼に貸してしまったのだ。不倫相手と別れ、女性の恋人を作れば部屋は返してくれるという。それまで行き場がない忍は暁人の厚意で同居させてもらうことになるが、元から苦手だった暁人と何かにつけぶつかりあい……? 全編書き下ろし!

【感想】
 十歳の時に十歳年上の兄が「自分は他にやることがあるから跡は継げない」と家を出てしまい、父が兄を勘当して以来、教育大学付属高校の学長の父の跡を継ぐ事は忍の義務となった。本当は自分だとて絵を描く事が好きだったけれども、親に反発する事は十三歳の時にある一言を聞いて止めた。それからは親の言う通りの進路を歩き、現在はいずれ継ぐであろう高校で英語の教師をしている。
 本心を悟られぬ様、伊達眼鏡で心にフィルターをかけて同僚からは若先生と呼ばれ…しかし、そんな反動からか付き合う相手は何時も既婚者の年上の男性で――。

 子供の頃に親に甘えられなかったからか、自分を押し込めて生きてきたからか、忍は内面が酷く混乱していて自分でもどうしたいのか解らなくなっている…それに対して暁人は理科系の質か何事もスッパリと竹を割った様に考え、しかも情緒に欠ける人柄で…思考回路が正反対な二人が共に暮らし、だんだんと相手に惹かれていく様子は読み応えがありました。
 お互いの事になると鈍感になると言うのはありがちと言えばそうなんですが、そこがプッと笑える感じです。
 同僚で暁人の友人の生物の星野亮平と化学の川嶋実のカップル(そう!この二人もゲイなのです!!)も要所要所でいい味出してくれて楽しかったです。特に亮平の鳥オタクぶりは面白い!この二人の話も読んでみたいと思いました。

評価【★★★★★☆☆】
『ふれていたい』 榊花月
ふれていたい榊花月 / 志水ゆき
新書館 Dear+文庫
560円 (ISBN4-403-52076-6)

【あらすじ】
 くしゃっとした、その飾らない笑顔が印象的だと思った。気が付けばもう、どうしようもないくらい好きになっていた――…。美術系の専門学校に通う夕雨は、小さなデザイン事務所でバイトをしている。ふとしたきっかけで、そのバイト先の向かいに事務所を構える商業翻訳家の桐島と言葉を交わすようになってから、夕雨の心は彼への想いでいっぱいになってゆく……。表題作とその後日談の、書き下ろし二篇を収録!
【感想】
 一年先輩の彼氏を追いかけて東京に出てきたけれども、彼氏には自分以外にも複数の“相手”が居て…高校時代から常に彼の相手は自分以外にもいて、遊ばれていると解っていても寂しくて…。
 人見知りもあり、なかなか周りに仲の良い友人が出来ないで居る夕雨はバイトのお使いで出掛けた出版社で、バイト先の向かいの桐島と会い挨拶を交わすが、桐島からは素っ気ない反応しかなくて…しかし次に出会った時は先日とは別人の様にフレンドリー、桐島曰く人見知りがあるとの事で、何処か自分の性格と通じるような親近感を抱き、自然な桐島の笑顔に何時しか癒されて、惹かれている気持ちを抑えられなくなって――。

 話としてはこういうのもあると思うのだけど、私の超個人的な嗜好で三角関係とかが苦手なので、イマイチ話に乗りきれなかったです。
 あと、桐島のキャラは好きなんですが主人公の夕雨の性格が後ろ向きすぎて読みながらイライラしてしまったり…(苦笑)。
 前半は、元カレとのエッチシーンが盛りだくさんでそれもちょっとなぁ…で、私の好みではちとありませんでした(残念)。

評価【★★☆☆☆☆☆】
『堕ちるまで』 響かつら
堕ちるまで響かつら / 史堂櫂
プランタン出版 プラチナ文庫
552円 (ISBN4-8296-2243-1)

【あらすじ】
 殺人事件を捜査するエリート警視・の前に現れたのは、桐生組若頭の桐生だった。高校時代のルームメイトであり、さらに暁の躰を奪って狂おしいほどの悦楽と絶望を教えた男――。犯人をつかまえたければ、代価を払えと言う桐生に、暁は決意する。二度と、この男の腕には堕ちないと。しかし、帰宅途中に攫われた暁を待っていたのは、桐生の甘美なまでに淫らな躾だった。
 「どうされたい。俺に跪くか、犯されるか」
 淫靡な囁きと嬲るような愛撫に暁は……?

【感想】
 都内で起こった連続殺人事件、既に二人が同じ手口で殺されマスコミも嗅ぎ付け出している。しかし捜査の方ではこれという手がかりのないまま、次ぎに事件があればマスコミも騒ぎ出すであろう状況で、警視庁警視の暁玲一はプロファイリングの専門家として犯人のプロファイルにあたっていたが、一連の犯行に何か違和感を感じていて…そんな暁の前に突然現れた桐生、彼はかつて高校時代に暁の躰を彼の意志に関係なく弄んだあげく半年後に何の言葉もなく姿を消した男だった。
 そんな桐生が10年ぶりに姿を見せたと思ったら、暁に言った言葉は「この事件には手を出すな」という思いがけないもので――。

 桐生と暁の関係の他に事件の犯人捜しと言う面白さもあって、読み応えはありました。ただ、暁が過去の出来事や、現在の立場に悩む一方で、桐生はヤクザらしいと言うか凄く我が道をいってて飄々としすぎてて…少しつまらなかったです。
 結局、事件もプロファイリングよりも桐生のヒントの方が解決に役立ってるのも少し残念だなぁ…と読んでる間は楽しめましたが、読後に気になる所がチラホラ出てしまいました。

評価【★★★★☆☆☆】
『吐息の中に閉じこめて』 結城一美
吐息の中に閉じこめて結城一美 / 桜城やや
プランタン出版 LAPIS文庫
552円 (ISBN4-8296-5365-5)

【あらすじ】
 新進デザイナー新名の幼なじみで仕事上の担当でもある瀬尾は何年も前から新名への恋心を隠していた。でも、恋人を亡くした新名が過労で倒れ、付き添う瀬尾は錯乱した新名に亡き恋人と間違われて抱かれてしまう――。平静を装う瀬尾だが、新名は瀬尾を意識しないでいられなくなり「もう一度抱かせてほしい」と言ってきて…!?

【感想】
 小中高大と同じ学校で共に成長してきた瀬尾歩と新名剣司。しかし高校三年の時に剣司に彼女が出来たのが切っ掛けで歩は剣司への気持ちに気付き…以来、自らの想いを封印して剣司の“友人”としてのポジションを大切に守ってきた…。しかし剣司が結婚まで考えていた恋人を亡くしボロボロになっていた時、彼女と間違った剣司に抱かれ――。

 えー、普通にノーマルな人がいくら薬で朦朧としていたからと言って、男性を女性と間違って抱くかナァ?…と言うツッコミは心の中でどうしても抱いてしまう始まり方ですが…そこはBL、サラリと流すべきなのでしょう。ハイ、流しました。
 歩の剣司への想いがすごく切なくて、途中で不覚にも少しウルッとなってしまいました。
 対して剣司は、「お前もうちょっと相手の事考えろ!#」な行き当たりバッタリと言うか、感覚で行動しまくってくれたと思いましたが、そう思わせるキャラの描き分け方がそれぞれの個性がしっかりと出ていて、尚かつ心理面もキッチリと描かれていたので、感情移入もすんなり出来たのだと思います。
 …しかし、熱しやすく冷めやすい剣司クン、その調子で歩に冷めたら許さんぞー!と読破すっかり歩びいきになってしまったのでした(笑)。 
 設定や展開に特に目立つ様なのがある訳ではなく、ベタな感じなんですが、それをそれだけで終わらせないのが結城さんの持ち味なのかなぁ、と唸らされる一作でした。

評価【★★★★★☆☆】
『そのわけを』 榊花月
そのわけを榊花月 / 金ひかる
竹書房 ラヴァーズ文庫
571円 (ISBN4-8124-2244-2)

【あらすじ】
 「俺は誰も愛さない」そう言う倉方には、冷たい美貌と屈折した性格のどこかに隠された秘密があるのかもしれない。
 大手デパートに勤める志紀にとって倉方の第一印象は最悪だった。人を見下したような視線、そっけない口調、どれをとっても下請けのデザイナーとは思えない態度の男だった。
 しかしある時、酔った勢いで倉方に絡んでしまった志紀は、そのまま倉方に抱かれてしまう。
 「お前がしつこいから抱いた」その後志紀に倉方はそっけなく言い捨てたが、志紀には倉方があからさまに他人を拒否する理由が気になり始めていた。
 冷たくあしらわれても倉方への想いが止められないと自覚した頃、倉方に激しい憎悪を抱く青年が現れて…。

【感想】
 外資系の百貨店の企画課に勤める志紀の目をひいたのは、自社のショーウィンドーを飾る黒とシルバーで彩られた異色のディスプレイ。美しいが夏のバーゲンとしてはどうなのか…そう思う志紀の前で淡々とディスプレイを完成させてゆくデザイナーの倉方は初対面からひどく無愛想で…。
 最初は苦手意識が勝っていた志紀だったが、彼を知るにつれ惹かれていく気持ちを抑えられず――。
 元々ゲイの志紀には、今まで想う人は殆どがノーマルで、どうせ報われないならと、求めてくる者だけを相手にしていから恋とも言えない様な関係しか築いて来れなかった。
 そんな志紀がふとした事がきっかけで、好みでもない倉方と一夜を共にし、けれど倉方は志紀に対して「淫乱なメス豚」とまで言い放ち決して優しくはないのに、ふとした所で微かな優しさが垣間見えて…そんな倉方が気になりだした志紀は――。

 志紀の自身が抱えるゲイである事へのコンプレックスや、倉方の過去への興味…言葉は乱暴だし愛想も悪いし、暴力はふるうわ、決してよい男ではないのに…だけど志紀がそんな倉方のふとした一面に惹かれていく過程には説得力がありました。
 読み終わっても決して倉方がいい恋愛相手とは思えないのに、何故か志紀を祝福する気持ちになれて…自分でも不思議です(苦笑)
 私から見て、倉方には過去のトラウマやら性格やらで今後も志紀が苦労するだろうな…と思うのですが…そして志紀も性格的に少し後ろ向き傾向がありそうなので、それら一つ一つに悩みそうなんですが、それでも二人がくっついた事には素直によかったね!と言いたくなってしまう。
 読後感的には自分でも微妙なんですがスッキリ感がありました。

評価【★★★★☆☆☆】
『この夜の果て』 毬谷まり
この夜の果て毬谷まり / 石田育絵
二見書房 シャレード文庫
552円 (ISBN4-576-06035-X)

【あらすじ】
今夜果たせなかったら、たぶん自分は狂ってしまう――。
 元華族の家柄の和彰は、結婚して事務機器販売会社『オムラ』へ婿養子に入り、社長として仕事に励んでいた。
 しかし、会社でも家庭でも自分に求められているのは華族というブランドだけだと思い知らされる。そして、己の存在意義がわからなくなってしまった和彰は、我を失いなんと自らの手で自分の局部を切断…。そんな心身ともに傷ついた和彰に救いの手を差し伸べたのは、秘書の長瀬だった。退院後、長瀬の誘いで彼の家で同居することになった和彰。だが、傷が治っても、局部を切断したため、自慰も満足にできず性欲を持てあまし、苦しみ悶える。そしてそのことを長瀬に知られてしまい、不本意ながらも彼と肉体関係を結ぶことに――。秘書×社長のセンシティブラブ♪

【感想】
 あらすじに仰天して購入決定(苦笑)
 こんな設定今まで見たことないよ!と少し興奮気味に読み始めましたが、設定のぶっ飛び具合からすれば、よく纏めてあったと言う感じで全体的に違和感なく読めました。
 次から次へと問題山積で主人公が苦しみ悶えるさまは、「そこまで苦しめなくても…」と誰にともなく呟いてしまう程苦しげで…そしてそれを影から見つめ、時に助け共に苦しむ長瀬…雰囲気的には昔懐かしい昼メロ風でございました。


(↓ここから少しネタバレ注意です)

 全体的に無難に纏められていて読み応えもあったんですが、私的に最後が少し不満と言うか物足りない感じが残ってしまいました。
 うーん、二人で新しい世界に飛び立つってのは解るんですが、あんなに苦労して社長をしていたし、会社の為に頑張ってきたのに、そんなにアッサリ辞めてしまうの?と…どれだけ苦しみながらも頑張っていたかを読んでいただけに、その点が少し勿体ないと言うか少し残念でした。

評価【★★★★☆☆☆】
『愛してないと云ってくれ』 中原一也
愛してないと云ってくれ中原一也 / 奈良千春
二見書房 シャレード文庫
571円 (ISBN4-576-06051-1)

【あらすじ】
そんなに恥じらうな。歯止めが利かなくなるだろうが。
 日雇い労働者の集まる街で診療所を経営している青年医師・坂下。彼らのリーダー格の斑目は、屈強な男たち相手に一歩も譲らず日々奮闘している坂下を気に入り、何かとちょっかいをかけていた。ある日、坂下と仲のよい日雇いのおっちゃんが肝硬変を患っていることが発覚。家族に知らせて手術を受けるよう説得してもらおうと考える坂下を、この街の現実を知る斑目は無駄だと一蹴する。坂下を諦めさせるため、躰と引き替えにならおっちゃんの住所を教えてもいいと条件を出す斑目。脅しのつもりだった斑目だが、自分の本気を示すために坂下はその条件をのんで抱かれることになり――。書き下ろしには斑目の腹違いの弟が登場。坂下をかけて斑目兄弟が直接対決!

【感想】
『愛してないと云ってくれ』
 親兄弟も医者の家系に生まれた坂下、だが現実の医療は金や利権が複雑に絡んだ物で、そういった世界に嫌気がさし、唯一理解を示してくれた祖母の後援のもと、日雇い労働者の街で開業した。
 医院の経営は、はかばかしくなく、また客は殆どが金のない荒くれ男達ばかりだが、そんな生活にも慣れ始めた頃、坂下の親しくしていたホームレスの“おっちゃん”が病に倒れ…このまま治療をしなければ早晩命に関わると、彼の家族を捜すのだが――。

 若さ故に青い理想を捨てられない坂下と、少しやさぐれ気味の何処か謎を持っていそうな、見た目は荒々しい色気のある斑目と言うのは、カップリングとしても絶妙で斑目がことある毎に坂下にちょっかいをかける様子は、まるで小学生が好きな子を苛めてしまうかの様な不器用さがあり、何でも飄々とこなしそうな斑目のそういった一面も良く、何よりそんな斑目に対して坂下が反撃にメスをしばしば投げつけるんですが、いつの間にかそれが“斑目専用”になっている所が!!読んでいて楽しかったです。
 二人の関係の他にも“おっちゃん”や労働者街の事などが織り交ぜて一つのストーリーになっていてスピード感あり、人情味ありで読み応え抜群でした。

『根無し草狂詩曲』
 坂下が大学病院を辞めて労働者街に開業してからそろそろ1年、今日も診療所には一癖も二癖もありそうな男達がたむろっている。
 そして斑目も今日も今日とて坂下にちょっかいをかけて…そんな日常に突如として響き渡る老女の悲鳴――。それは坂下の祖母・フサの登場だった…。祖母が父との同居を嫌がりここに来たと言うので、暫くの間だ坂下と共に暮らす事になったのだが、フサには何か秘密がある様で…しかもそんな折、以前少し“ヤバイ”仕事を受けたヤクザから“専属”にならないかと勧誘がかかり、しかも言ってきたヤクザは斑目の異母弟で――!?

 前作に引き続きのハラハラ・ドキドキ、テンポのよいストーリー展開で飽きのない作品でした。正直、少しネタが多すぎて描き切れてない感も残ってしまいましたが(坂下と坂下父との関係や、斑目と斑目弟との対決など)まぁ、本筋とは違うのですが…。話が面白く、キャラも魅力的なだけにもっとじっくり描いて欲しいなぁ…と感じました。
 今作何よりも私のツボを刺激したのは坂下の“ババコン”ぶり!またそのお婆ちゃんフサさんは労働者達と一緒に飲むわ打つわでナチュラルに溶け込んでるし――でも坂下の前ではか弱い祖母を演じる所なんかはお茶目でたまらなくキュートです。
 実は前作で読んでいた時は“祖母”さんは凛とした雰囲気の方なのかしら――とか想像してたんですが、180度イメージが違って(何しろ前作では坂下視点で描かれていたからだと思うんですが)それがまた楽しかったです。
 山あり谷ありで何とか坂下と斑目も想いが通じ合ったかな?と言う所まで行けましたが、この二人の事なのでまだまだ波乱がありそう…と言う事で是非とも続編希望!な作品でした。

評価【★★★★★☆☆】
『おとなりにノラ猫』 新井サチ
おとなりにノラ猫新井サチ(Arai_Sachi)
徳間書店 Charaコミックス
533円(ISBN4-19-960321-2)

【あらすじ】
 上京してきたばかりのは、引っ越しの挨拶で美人な隣人・莉緒と出会う。けれどその夜、隣から聞こえてきた喘ぎ声は、なんと男同士!!
 都会の夜は、隆の想像をはるかに超えていた…。
 その莉緒に「サービスするよ♪」と誘われて!?
 天然な獣医×敏腕トリマーの大人気シリーズ♪
 新井サチ待望のファースト・コミックス登場!

【感想】
『おとなりにノラ猫』
 沖縄から伯父の動物病院を手伝う為に上京してきた山城隆はちょっとポンヤリした性格の獣医。その性格のたまものか不思議とどんな動物にも懐かれると言う特技(?)の持ち主。そんな彼の越してきたアパートの隣人の永瀬莉緒は何処か寂しそうな猫のような目をした人で、本職のトリマーの他に、男性相手の売りをしてる様子で――。

 表題作3編。
 寂しいノラ猫(莉緒)がだんだんと隆に心を許していく様子がほのぼのとしていてヨカッタです。
 結構、ハードな場面も新井さんの持ち味なのか、暗く成りすぎずに、所々にプッと笑えるシーンが織り込まれていて楽しく読めました!
『レンズが映した忘れ物』
 20歳の青木怜は絵で身を立てたいと実家を飛び出して東京に出てから2年間、がむしゃらに頑張ってきたが自分の絵に目を留めて貰えず疲れ果て、実家に戻ろうとしていた。最後に街角で絵を置いていたら、男が声をかけてきて。
 彼は怜の尊敬する写真家の泉まどかだと名乗り、写真展用の写真のために怜を撮りたいと言ってきて。
 実家に戻る予定で下宿を引き払っていた怜は写真が撮れる迄、泉と同居する事になるが――。
 怜はロシア人の血が入っていて見かけが日本人に見えないスタイルの良さで、泉は幻想的な写真を撮るのに見かけがムサい髭の兄さんというのがツボでした。
 ただ話の筋としてはイイ感じなんですが、ページ数の関係なのか凄く駆け足ぽくて細部の設定が少し解りにくかったのは残念。もう少しじっくり読みたいお話でした。

『ゴールイン!』
 伸二と彪は幼稚園からの幼なじみで小さい頃から共にプロのサッカー選手になるのが夢だった、しかし高校卒業を目の前にして、彪は地元の大学にサッカー推薦での進学が決まっていたが、伸二は高校でも万年ベンチ…サッカー選手の夢は彪に託して、卒業後は東京の服飾デザインの学校への進学が決まった。今までは共に同じ道を進んで来たが4月からはお互い進む道が初めて分かれる。
 少し寂しい気持ちを抱えている伸二だが、ある日彪から好きな人、しかも片想いをしてる相手が居ると聞き、それまで隠し事などなかっただけに何故かショックで――。

 青春だなぁ…清々しいです。
 話の設定などは特に目新しいモノではないのですが、新井さんの持ち味が出ていて読後感が爽やかでした。

評価【★★★★★☆☆】
Copyright © 2004 Powered By FC2 allrights reserved. template by kayoEgawa
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。